少年審判に弁護士拡充へ 国選付添人、重大事件以外も(H24.1.4付asahi.com記事より)

http://www.asahi.com/national/update/0103/TKY201201030391.html

「付添人」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。

この付添人とは,少年事件において,少年が家庭裁判所に送致された後に,少年審判の手続が適正に行われるよう,少年の立場から審判手続等に関与する者をいいます。
成人の刑事事件における「弁護人」のような立場にあるともいえるでしょう。

成人の場合には,「国選弁護人」制度があり,一定の資力要件を下回る者に対しては,事件の軽重にかかわらず,国によって弁護人が付されます。

他方,少年事件の場合には, 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合,及び死刑又は無期もしくは短期2年以上の懲役または禁錮に当たる罪を犯したとされる少年のうち,裁判所が必要と判断した場合にのみ,「国選付添人」を付けるものとされています。

しかし,少年の場合,未だ発達途上にあり,成人に比べ思慮分別が備わっているとはいえませんから,①自己の意見を外部の大人にはっきり伝えることができない,②強く言われると反論できない,③警察官等の取調べに対し迎合・誘導されやすく,えん罪に巻き込まれる危険が成人以上に高い,などといった問題があります。

また,「付添人」の大事な役割として,少年の反省を促し,家族と少年との関係を改善させたり,少年の受入先を探したりといった,少年を取り巻く環境を調整する役割があります。

少年審判を受ける少年の多くは,生育歴や家庭環境等に大きな問題を抱え,信頼できる大人に出会えないまま非行に至っているケースが多く見られます。

このような少年を受容・理解した上で,少年に対して必要な法的・社会的援助を行い,少年の成長・発達を支援する付添人は,少年の更生にとって不可欠な存在であるといえます。

このような「付添人」は,成人の場合における「弁護人」以上に,不可欠な存在といえるでしょう。

ところが,現在は国選付添人が選任される事件は,殺人や強盗等の重大事件に限られ,2009年に選任された国選付添人は,少年鑑別所に収容された少年の約4.6%に過ぎません。
現在選任されている付添人の大半は,国から費用が出ない「私選付添人」ですが,上記の付添人の役割の重要性に鑑み,その費用を日弁連の基金から支出されているのです。

しかし,成人の場合であれば,国選弁護人が選任される事件であるにもかかわらず,少年の場合には国から付添人が付けられないというのはあまりにバランスを欠きますし,上記のように少年は成人の場合以上に弁護士等の援助が必要なのですから,本来は当然国から付添人を付けられるべきであると言えるでしょう。

今回,報道によれば,国選付添人の対象を拡充すべく法務省が検討に入ったとのことですが,付添人が必要でない少年事件は1つもないと思いますから,全件に国選付添人が認められるよう,十分に検討していただきたいと思います。