クレーム対応に関して,よくある誤解として,「謝罪すると責任を認めることになる」,あるいは「謝罪すると後から不利益になる」として,相手に謝罪をすべきではないというものがあります。
しかし,必ずしも「謝罪」=「責任の発生」ではありませんから,謝罪することと責任を認めることは基本的には異なります。
また,謝罪すべき場面で適切な謝罪がなければ,相手の不平・不満は蓄積されるばかりですから,後の解決を困難とさせる原因となりますし,更なる2次・3次クレームを発生させる原因にもなりえます。
もっとも,やみくもに謝罪すればよいのかというと,それも誤りです。
特に,クレームの受付の段階では,責任の所在が明確ではありませんから,責任を認めるかのような全面的な謝罪はできませんし,すべきではありません。
そのため,謝罪についても,「何に対する謝罪なのか」を明確にした上で行う必要があります。例えば,不愉快な思いをさせたことへの謝罪,感情を害したことへの謝罪,ご満足いただけなかったことへの謝罪,調査に時間を要することへの謝罪,回答を待たせていることへの謝罪,といったように謝罪の意味を明確にし,決して責任を認めたうえでの謝罪でないことを示す必要があります。
このように謝罪の意味を明確にしたうえでの謝罪であれば,それが法的な責任を認めたことにはならないのです。