親族外承継とは,事業を親族でない従業員や役員,外部から招聘した者に承継させる方法をいいます。
親族外承継の場合,親族内承継と比較しても,以下のとおり検討すべきポイントが異なってきます。
親族画外承継を成功させるポイント
⑴ 後継者を中心とする経営体制へ向けての環境整備をする
親族外承継の場合,社内における後継者候補としては,共同創業者,専務等の番頭格の役員,優秀な若手経営陣,工場長等の従業員が考えられます。場合によっては,取引先や金融機関等の社外から後継者を迎えることもあるかもしれません。
もっとも,親族内承継の場合と比べると,親族外承継は,従業員等が心情的に受け入れるのが難しい場合があり,特に社内に基盤がない者が後継者となることについては,慎重な判断が必要です。
社内の関係者に受け入れられるためには,事前に後継者として発表することに加えて,後継者が数年間社内で役員等として活動することにより,社員とのコミュニケーションを図るといった配慮が必要であると思われます。
また,取引先や金融機関は,特に中小企業の場合,会社自体の信用よりも経営者個人に対する信用に依拠していることが多いといえます。そのため,取引先や金融機関等などに対して,なるべく早く後継者を紹介し,事業承継の方針につき理解を得ておくことも必要です。
⑵ 株式の分散を防止・解消する
これについては,親族内承継の場合とほぼ同様です。
⑶ 個人保証・担保を処理する
中小企業の場合は,金融機関からの借入れの際,経営者が個人保証をし,あるいは個人資産を担保に提供しているケースが多くあります。
一般的には,経営者が交代したからといって,経営者の連帯保証を解除されることは少なく,経営者に加えて後継者も連帯保証人に加わるよう求められるのが多いといえます。また,個人資産の担保についても,他に十分な担保がある場合を除いては,その解除は困難であるといえます。
できる限り債務の圧縮を図ることや,後継者の報酬等を増やすことにより,後継者の保証能力を持たせるなどの対策を講じる必要があります。また,経営者名義の事業用不動産が担保になっている場合には,会社がその不動産を買い取るなどの方法も考えられます。
⑷ 経営権を承継させる方法を検討する
親族外承継の場合でも,生前贈与や遺言により,後継者に株式等を承継させることは可能ですが,無償での財産移転ということになりますから,後に親族との相続トラブルが発生しやすいといえます。そのため,実際には有償による株式等の移転のケースが多いといえます。
その場合,後継者が経営者から株式を買い取る方法が手法の中心となっていきますが,後継者が買い取り資金を十分に準備できるかが問題となります。
後継者の能力や事業の将来性を担保として,金融機関の融資や投資会社の出資等を受けられる場合もありますが,経営承継円滑化法に基づいて,日本政策金融公庫による後継者個人への融資も利用できる場合もありますので検討してみるとよいでしょう。
また,買取価格が高額となる場合に,金融機関からの貸付や投資ファンドからの出資を受けて,受け皿会社(特定目的会社。SPC)を設立し,その後,受け皿会社と承継対象会社が合併するスキームを利用することで,資金調達を図る方法もあります。