相手の勝手な財産処分を防ぐ
強制的に債権を回収するには,最終的には相手が所有する財産から強制的に処分することで実現しなければなりません。もっとも,そのためには,相手に強制執行の対象となる財産が存在していなければなりません。
強制執行を行うには,その前に訴訟等の手続を取る必要がありますが,判決等が出るまでの間に,相手が財産を勝手に処分してしまえば,結局強制執行をすることができなくなります。
そのような相手の勝手な財産処分を防止するために,仮差押え,仮処分といった裁判所の保全手続を利用することを検討する必要があります。
民事調停
第三者が間に入ることで,話し合いによる解決が期待できる場合や,証拠が十分でなく訴訟を起こしても勝てない可能性がある場合には,民事調停の申立てを検討します。
もっとも,民事調停はあくまで話し合いによる解決を図るものですから,こちらもある程度の譲歩はせざるを得ませんし,相手が出頭を拒否したり,全面的に争う場合には効を奏しません。
支払督促
取引先に金銭債権を持っており,証拠も揃っている場合には,支払督促の手続を検討します。
支払督促は,申立人の申立書類のみで支払督促状を相手に発送し,相手が異議を述べなければ裁判所から仮執行宣言をしてもらえることになります。この仮執行宣言付支払督促があれば強制執行の手続をすることができますので,通常の民事訴訟に比べると簡便な方法です。
もっとも,相手から異議が出た場合には,通常の民事訴訟に移行することになります。
少額訴訟
金銭債権の額が60万円以下の場合には少額訴訟を起こすことができます。
少額訴訟は,原則として1回の審理で証拠調べを終え,判決が出ますので,通常の民事訴訟に比べると,簡易な手続となります。
手形訴訟
受け取った手形が支払期日に決済されなかった場合に,手形の振出人や裏書人に対して手形による金銭の支払いを求める手形訴訟を提起します。
通常の民事訴訟に比べると,簡易迅速な訴訟手続です。
通常の民事訴訟
上記の簡易な訴訟手続等を利用できるケースはかなり限られていますので,通常の民事訴訟を提起するのが,最も正攻法であるといえます。
相手がこちらの請求内容を争えば時間がかかりますが,特に争わない場合には第1回目の期日終了後に速やかに判決がなされるケースも多いといえます。判決を取得すれば,判決に基づき強制執行を申し立てることができます。
また,裁判官から和解を勧められることも多く,裁判上で和解が成立すれば,万一相手が和解の内容を守らない場合でも,和解調書に基づき強制執行を申し立てることが可能です。
強制執行を申し立てる
最終的には,相手の財産に対して強制執行を行うことで回収を図ります。
強制執行の対象としては,不動産,動産,債権の3種類があり,相手の財産状況や申立ての費用等も考慮して,対象を検討することになります。