労働問題の解決手続について
労働問題の解決手続には,⑴裁判上の手続と⑵裁判外の手続に分かれます。
⑴ 裁判上の手続
裁判上の手続には,①訴訟,②労働審判,③民事調停などがあります。
① 訴訟
訴訟とは,原告の申立てに基づき,法律上の争いについて,裁判所が事実を認定した上で権利・法律関係の存否を判断する手続をいいます。
訴訟に適する場面としては,ⅰ)事実関係に争いがあるケース,ⅱ)話し合いによる解決が困難なケース,ⅲ)当事者が被る不利益が甚大なケースなどが考えられます。
他方で,訴訟は,時間がかかる,証拠による立証が厳格に求められる,公開の法廷で行われるなどのデメリットもありますので,とにかく早期に解決する必要があるケースや,事実関係に争いがないケースや話し合いで解決できそうなケース,外部に知られたくないようなケースについては,他の手続を検討する必要があります。
② 労働審判
労働審判とは,個々の労働者と事業主との間に生じた労働関係に関する紛争について,裁判所において,裁判官と労働問題に専門的な知識経験を有する者で組織する委員会が,調停による解決を試み,解決に至らない場合には審判を行う手続をいいます。
労働審判は,原則3回以内の期日で終結することを特徴としますので,迅速な解決を希望する場合で,調停成立の見込み,すなわち双方に歩み寄りの見込みがあるケースに最も適するといえます。
他方で,3回以内では解決困難な複雑なケース,当事者が証拠に基づく詳細な事実認定を希望するケース,審判に対し異議が出されることが確実なケースについては,あまり向かないといえます。
③ 民事調停
民事調停とは,法律上の争いについて,当事者の話し合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続をいいます。
民事調停は,代理人を立てず本人が申し立てることが容易で,調停委員にじっくりと話を聞いてもらうことができる手続ですが,他方で相手方が欠席するなどで話し合いに応じる姿勢がなければ効を奏しません。
また,労働審判との比較でいえば,調停委員は必ずしも労働問題に対する専門的知識・経験があるわけではありませんし,迅速性にも欠けるといえます。
⑵ 裁判外の手続
裁判外の手続としては,以下のものなどがあります。
・ 労働基準監督官等への申告
・ 都道府県労働局に対する相談・情報提供,あっせん申請
・ 都道府県労働局長に対する援助の申立て,調停の申請
・ 都道府県労働委員会に対するあっせん申請
・ 弁護士会の紛争解決センターへのあっせん申請 など