近時,成年後見制度に代わるものとして,福祉型信託と呼ばれる信託を活用する方法が注目されています。
信託とは,簡単に言えば,ある一定の目的を定めて,財産の管理・処分を他人に託すことをいいます。
信託には,信託を設定する「委託者」,信託を委託される「受託者」,信託によって利益を得る「受益者」が登場します。
例えば,高齢になった親が,子供に預金の管理を委ねて,そこから親の生活に必要な支出をしてもらいたい場合,親が「委託者」となって,所有する預金を信託財産として,受託者である子供へ託し(譲渡し),委託者である親が受益者にもなって,親の生活に必要な現金を毎月給付するようにします。
このようにすれば,親に判断能力がなくなった後でも,受託者である子供が金融機関から預金を引き出して,親に給付することができます。
また,受益者である親に判断能力がなくなった後でも,受託者である子供に適切な請求ができるよう「受益者代理人」を置いたり,受託者である子供を監督する「信託監督人」を置いたりすることもできます。
信託の内容は,本人の生活支援や財産管理を含めて,様々な内容を取り決めることができますので,多彩な内容を盛り込むことも可能です。
成年後見制度では,必ずしも本人のためとはいえない相続税対策を目的とする贈与等,残された家族のための財産利用はできないと考えられています。その意味では,成年後見制度でもあらゆるニーズに対応できるわけではありません。
そのため,成年後見制度に代わる新しい財産管理の方法として,福祉型信託の活用が注目されているのです。