任意後見契約を締結しても,効力が発生するのは,本人の判断能力が低下してからとなりますので,締結から効力の発生までに期間が空いてしまうことになります。もっとも,その間にも,本人の財産管理に不安があって,代わりに誰かに財産管理をお願いしたいという場合もあります。
そのような場合には,通常の委任契約の形式で,「財産管理契約」を結ぶとよいでしょう。
財産管理契約のメリット
まず,財産管理契約では,財産管理を誰にでも自由に委ねる(委任を受ける者を「受任者」といいます)ことができます。また,委任の内容や報酬についても,自由に決めることができます。
また,いつでも解約ができます。
財産管理契約のデメリット
財産権利契約は,あくまで「契約」ですので,財産管理契約の締結時点で,本人の判断能力が失われていれば,締結することはできません。
また,本人が判断能力のあるうちに締結した財産管理契約は,後に本人が判断能力を失ったとしても,効力が続きます。このため,本来,受任者を監督する立場にある本人が,判断能力を失った以降は,受任者を監督できなくなります。
さらに,金融機関の場合,財産管理契約の受任者を代理人として認めるかは,金融機関ごとに個別に判断することになります。
財産管理契約と任意後見契約の併用
このような財産管理契約のデメリットを補うために,財産管理契約と任意後見契約を同時に締結し,まずは財産管理契約を開始して,次に本人の判断能力が不十分になったときに任意後見を発効するという方法が考えられます。
そうすると,本人が判断能力を失った以降は,家庭裁判所から選任された任意後見監督人による監督が期待できますし,任意後見人であれば単独で代理権限を行使し金融機関に預金の払い戻し等を請求できます。